データ分析のための心理学[第05回]〜行動分析学4(事例等)〜

さて、比較的に常識的な話が続いて拍子抜けしている方もいるかもしれません。
心理学は誰もが日々経験している事の集大成なので、基本的な部分ではとても常識的な概念が多い学問です。逆に驚くことの連続なら、それらの点ではあなたの認識が全体的な傾向とは違うということです。
個人が判断すると、そういった全体的な傾向とは違う認識を元にして判断を下す危険があるので、心理学的な知見は最大公約数的な答えを求める際にも有用です。

原因が後に来る

ご褒美と罰の話にもどると、ここには大切な知見が隠れています。
それは、原因が後に来るということです。

普通データ分析を行うとき、原因は先にくると仮定しがちです。筆者の場合も、ある結果に着目して分析を行う場合その結果と同時あるいは以前におきた出来事の情報を重視しして分析を行う事が多かったと思います。
Webページの分析では、直前に見ていたページは流入経路などが興味の対象のように感じます。もちろん、対象の後に来るデータは集めにくいという事もあります。行動分析学から得られる知見として、人の行動を習慣づける要因は後に来る事も多いということを意識してデータを眺めてみると、新しい発見があるかもしれません。

人の行動を分析するようなシーンでは、その行動に先行する事象だけでなく、その行動を強化したと思われる事象を分析対象に入れると良いかもしれません。

事例

あるバス会社が普段は5000円近くする路線を数量限定として500円で販売するという販促キャンペーンを行いました。この告知はバス会社のHPで行ったのですが告知が行われるタイミングはランダムでした。この結果HPへのアクセスは大きく増加しました。

日経新聞などにも取り上げられていたのでご存じの方もいるかもしれませんが、この例ではバスのチケットが激安で買えるということが好子になっています。出現がランダムなので安く出ているかは同社のHPへ行かないと分かりません。このため、普段はバス会社のHPをチェックする習慣がなかった人に対して強化が働き、HPへのアクセス行動を増加させたと考えられます。
500円というアピールによるマーケティングの力も大きかったと思いますが、後述するスケジューリングの適切さと合わせ、行動の後に出現する(かもしれない)ご褒美がアクセス行動を増加させた例と言えます。

この記事のカテゴリー

データ分析, 行動分析学
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