各国の人々の性質(「戦争と平和」より)

「戦争と平和」(トルストイ著,工藤清一郎訳,昭和47年)の第三巻の中に、ヨーロッパ各国の人々の性質を語っている部分があったのでメモ。

ドイツ人
「彼は、もう治療の見込がないほど、狂信的にまで自己過信にこりかたまっている人々の一人だった。こういう人間はドイツ人にしかいないが、それは科学という抽象的理念、すなわち完全な真理の観念的認識の基礎の上に立って、絶対の自信をもつことができるのは、ドイツ人だけだからである。」

フランス人
「フランス人が自信をもつのは、自分は頭脳も肉体も、男性をも女性をも無抵抗にするほど魅力的であると考えるからである。」

イギリス人
「イギリス人の自信は、自分は世界でもっともよく組織された国の公民であるという基礎の上に固定している、だからイギリス人は、イギリス人として何をなすべきかを常に知っているし、イギリス人として自分がなすことはすべて疑いもなくりっぱなことである、と心得ている。」

イタリア人
「イタリア人が自信をもつのは、自分が熱狂しやすく、自分をも他人をもあっさり忘れてしまうからである。」

ロシア人
「ロシア人が自信をもつのは、まさに、自分は何も知らないし、知りたいとも思わないからであり、だからロシア人は何事も完全に知ることができるなどとは信じないのである。」

ついでに、上の文章に続いてドイツ人への悪口が入っている。
「ドイツ人の自信はもっとも始末が悪く、もっとも頑強で、もっとも鼻持ちならない、というのは、ドイツ人は、自分は真理を知っている、それは自分が考えだした科学で、これこそ自分にとって絶対の真理であると、思い込んでいるからである。」

第三巻,p84-85

各国の人々の性質では、沈没船の喩えとか有名だけど、こっちもなんとなくうなずける所があって面白い。

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作家について, 徒然
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