最近のろのろと読んでいる吉屋信子の「花物語」、下巻も後半に入りかなり雰囲気が変わってきた。キリスト教について造詣が深いと思わせる話や、どうやら男女差別に対してはっきりした意見を持っているらしいと思わせる話が入っている。205ページから始まる「ヒヤシンス」は女性のタイピストが女性の意見を代表して経営者へ談判しに行き、クビになる話だった。小林多喜二の蟹工船にも通じる筋立てで、テーマは女性の尊厳。それを積極的に肯定しているのかどうかは判断に迷う文章だけれど、とにかくそういった発想が彼女にあるということが意外だった。
追記:
後書きにも、「花は世界に抗する、、、」といった文章と共に吉屋信子の作品が当時としてはかなり進歩的だった事が紹介されている。そんな作品が連載を続けられたのは、男性の登場しない安全なロマンス小説としてのイメージが強かった事のおかげだったとのこと。