データ分析のための心理学[第02回]〜行動分析学1〜

月給とボーナス

さて、あなたは月給とボーナスのどちらが従業員の成績を左右すると思いますか?

これまでの人生経験や周りの状況によって、答えとその理由は様々だと思います。一方、行動分析学の知見に基づいた答えは1つ、ボーナスです

行動分析学により

一定の間隔で決まった量の報酬が期待できる状況よりも、ランダムに量も分からない報酬が与えられる状況の方が報酬獲得のための行動が増加する、という事実が科学的に明らかになっています。

行動分析学の弱点

さて、上記のような結果だけ見ると、なかなか使えそうな行動分析学ですが、弱点もあります。それは行動分析学の基礎的な実験の多くは動物を対象にして行われているということです。行動分析学では人間と動物の共通の性質を仮定してストーリーを組み立てることがあるため、実際には実証実験などで人間にも当てはまる事が確認されている知見でも、根拠となった実験を見てみると対象がネズミだったり鳩だったりします。

この連載では数回に分けて行動分析学の基本的な部分を、自分の復習もかねて紹介したいと思いますが、上の性質も合わせ、こんな学問もあるんだな程度に考えながら読んで頂ければ幸いです。連載を通してデータ分析にどう役立つかの具体例も示していきたいと思います。

なぜ弱点を先に説明するかというと、心理学という世間的に誤解されやすい学問であまり大げさな説明をすると、過度な期待を抱いてしまう読者の方がいるかもしれないと思うからです(この事は統計の知識や機械学習の知識にも言えますが)。

行動分析学とは

行動分析学はアメリカのスキナー(Burrhus Frederic Skinner)という心理学社が創始した心理学の一分野です。

動物や人間の行動を分析する学問と行ってしまえばそれまでですが、Wikipediaではその特徴を次のように紹介しています(括弧内は筆者加筆)。

・行動についての哲学的な立場として、徹底的行動主義を採用する。
(内面的な部分はブラックボックスにして、外から観察可能な部分だけを科学的に研究しようという立場です)

・ヒトだけでなく動物を含むオペラント行動を研究対象とする。
(オペラント行動:何らかの目的のために行う行動。動物で言えば餌を貰う為に行う芸など)

・ある行動の予測と制御ができることをもって、その行動を理解できたとする。

・行動の原因として、環境要因を重視する。
(フロイトなどのが提唱する無意識的な欲求などは重視しないということ)

・研究法としての実験計画法や統計的検定に基づく群間比較を用いず、行動の直接制御による単一被験体法を採用する。
(実験計画法:A郡には訓練Aを、B郡には訓練Bを行い訓練の違いによる結果の違いを調べるといった研究方法。
単一被験体法:少数の対象に対して、訓練Aを行う前の行動、行った後の行動、などを比較して訓練の結果を調べるといった研究方法)

並べてみると、なんだかとらえどころが無いように感じますが、動物や人間に共通する、アメとムチで相手を動かす原理の研究。対象を取り巻く環境から次の行動を予測する研究。をやっている学問と言えます。

本格的に勉強したい方は専門書をあたって頂ければと思います。

この記事のカテゴリー

データ分析, 行動分析学
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