「うたかた・サンクチュアリ」(吉本ばなな)

題名:うたかた・サンクチュアリ
著者:吉本ばなな
発行所:(株)福武書店
タイプ:福武文庫 よ0402

「キッチン」で有名な吉本ばななの第二作目。

内縁の父を追って母親がネパールへ旅立ち、一人になった主人公の鳥海人魚(とりうみ・にんぎょ)は、母親の違う兄、かもしれない高田嵐と町で偶然に出会う。二人は互いの境遇を思い合ううちに、次第に親しくなってゆくけれど。

初めのうちは少し沈んだ印象が強いですが、だんだんと明るい雰囲気になってゆきます。両親の印象も初めはあまりぱっとしないのですが、こちらもだんだんと魅力的になってゆきます。全体的に、読んでいて元気になってくるような作品です。

精神的に調子が悪いとき、そんな気分から抜け出すための方法はいくつもありますが、本を読んで元気になろうというのもその一つだと思います。そして、この方法にもまた幾つか種類があるということをこの本を読んでいて思いました。その一つは、なるべく自分が同調できる作家の作品を読み、共感することで自分のような感覚をもっている人間が他にも居ることを確認して安心する方法。もう一つは月のように新鮮な光を放つ作品を読んで明るい雰囲気を獲得する方法で、この「うたかた」は手放しで明るい作品ではありませんが後者のような魅力を持っているように思いました。

実のところ、このレビューは読了後2週間くらい経ってから書いた物で、今この本をパラパラ読み返してみても、どのあたりからこのような印象が出てきたのか、はっきりと思い出せないのですが、当時の雑想ノートに「うたかた」というタイトルで上の内容の文章が書いてあるので、読んでいるうちに、どこかでそういう気分になるのだと思います。作中のお父さんのキャラクター性のためかもしれません。

上記の他にも、ヘミングウェイのように圧倒的に力強い作品を読んで影響を受けるという方法や、ジュール・ベルヌの作品や多くの推理小説のような知的に小気味よい作品を読むという方法もまた、選択肢に入るかもしれません。もちろん、本をよむ目的が、上のものだけだとは考えませんが。

「うたかた」の他に「サンクチュアリ」という作品も収録されています。

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読書, 読書感想
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