「道ありき」(三浦綾子)

題名:道ありき
著者:三浦綾子
発行所:(株)主婦の友社

療養生活を通じ、著者がキリスト者となるまでを綴った言葉の記録。

「女にだって魂はある」女学校時代、そう自分に言い聞かせていた勝ち気な少女だった三浦綾子は婚約者から結納の入るその日に貧血で意識を失った。敗戦後の精神的な混乱から二重婚約を行っていた自らに対する罰であると感じられたその失神は、その後13年間に及ぶ結核との闘病生活の幕開けだった。

この作品は小説家三浦綾子の自伝小説です。思い出や手紙を手がかりとして著者の歴史をたどっているため、少し読みにくい作品です。また、戦前教育の中に育ち多量の読書を通じて形成された著者の価値観が、現代の価値観とは大きく異なっている点や、おそらくキリスト教的立場から、著者自身を美化しないようにという意識が強く働いている点も、普通の感覚で読み進めることを困難にしています。

この作品に表されている作者像は、意志的ではあるけれどかなり嫌な女性です。たしかにそれは否定できないことで、事実このような女性にはちょっと近寄りたくありません。けれど彼女が多数表している他の小説作品から読み取れる三浦綾子像は、彼女に対するまったく別の、たくましくて豊かな精神を持った女性としてのイメージを形作っています。それらを念頭に置きながら読むと楽しめる作品です。

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読書, 読書感想
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